仙台高等裁判所 平成元年(ラ)69号 決定 1989年8月15日
抗告人
相互砕石株式会社
代表者代表取締役
粟 野 昭 夫
主文
本件抗告を棄却する。
理由
1 本件抗告の趣旨及び理由は別紙執行抗告状写し記載のとおりである。
2 よって検討するに、本件記録によれば、本件競売手続は、原裁判所において、平成元年五月二六日、入札期間を同年七月三日から同月一一日まで、開札期日を同月一四日午前一0時、売却決定期間を同月一九日一0時と定めて売却実施命令が発せられ、同月一四日の開札期日において抗告人が最高価買受申出人とされたこと、しかし抗告人は法人であり、抗告人会社代表取締役名義の我妻守に対する委任状は添付されたが、代表者の資格を証する書面の提出はなかったこと、そこで同月一九日の売却決定期日において、本件売却不許可決定が言渡されたものであること、その後同月二四日本件執行抗告状の提出と共に、上記代表者の資格を証する書面(抗告人会社の登記簿謄本)が提出されたことが認められる。
上記の事実によれば、抗告人の買受申出は民事執行規則四九条、三八条三項に違反し、この違反は買受申出人の資格に関する重大なものであるから、民事執行法一八八条、七一条七号の売却不許可事由に該当するものと解される。
抗告人は、執行官に書類の不備がないかどうかを再三確認してもらったうえで、最高価買受申出人と定められたものである旨主張するが、仮にその主張のような事実があったとしても、そのことから上記の瑕疵が治ゆされるとは解し難い。また、本件執行抗告時に上記書面が提出された点についても、執行手続の迅速性、安全性、画一性に鑑みれば、遅くとも売却決定期日の終了までに上記の瑕疵が治ゆされない以上執行裁判所は売却不許可決定をするほかはない。したがって、その後における上記書面の提出について追完を認めることはできないというべきである。
3 よって、抗告人に対する売却不許可決定は相当であって、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官糟谷忠男 裁判官渡邊公雄 裁判官後藤一男)
別紙執行抗告状
抗告の趣旨
原不許可を取り消し、相互砕石株式会社 代表取締役 粟野昭夫に対する売却許可決定とする裁判を求める。
抗告の理由
1 抗告人は、平成元年七月一一日不動産強制競売の申し立てをし山形地方裁判所米沢支部にて平成元年七月一九日に受理された。
2 山形地方裁判所米沢支部は、平成元年七月一九日に前記申し立ては、「民事執行法第七一条第七号に言う資格証明証の添付がない」との事由で売却不許可の決定を受けた。
3 しかしながら、抗告人は代理人に対し書類の不備がないかどうか、執行官に入札最終日、七月一一日代理人を三度出向させ書類の確認をしていただいたうえで、入札を受理されたものであります。その結果として七月一四日午前一0時開札があり最高価買受人として認められ、落札したものであります。
4 よってこの抗告状に「資格証明証」を添付しますので、抗告の趣旨記載の裁判ありたく民事執行法四五条第三項、第一0条によりこの執行抗告を致します。